『マグレガーのX理論とY理論で会社の「価値観」を考える』2
2007年09月20日
今回は前回お話したバーナードの理論に絡めて
人事制度の運用に悩まれていた企業様の実例をお話したいと思います。
先日、エステサロンを都内で10店舗展開されている企業の事業部長様から
こんな相談を頂きました。「人事評価で悩んでいます。当社の理念は『私の大事
なお客様への感謝・感動!』なのですが、半年前にマネージャークラスが8人も
辞めてしまったのです。というのも『社長は毎日お客様への感謝を第一に考えろ
と言うけれど、月末になると数字を上げろ、売ってこいと強制するし、人事評価も
売上達成したかどうかだけで評価するじゃないですか。社長の理念って飾り物
なんでしょ?もう、騙されません。』というのです。いや、大変な痛手でした。急遽、
目標管理シートを作って数字以外の成果でも評価することを一人ひとりと面談して
握りましたが、なかなか運用が上手くいかないんです。社長は本気でお客様への
当社の考え方・価値観を理念という形で社内外に示しこの考えのもとにお客様に
選ばれたいと思ってるのですが、マネージャー達からすると、信じられないんで
しょうね。確かに一方で感謝、一方で押し売りですからね。矛盾してるんです」
こんな相談に私は答えました。「事業部長、矛盾しているとおっしゃいましたが、
ほんとうにそう思っているんですか?創業期を越えたばかりの御社のキャッシュ
フローが不安定なのは、当たり前です。一方で社長の理念も本物なんでしょう。
だから、理念の下に事業を継続するためには売上が大事なんですよね。一方で
お客様への感謝・感動を言い、一方で売って来いと檄を飛ばすのは、矛盾でも
何でも無い、当たり前です。どうやら、御社では社長だけが矛盾を抱合して戦って
いるようですね。マネージャーたちも二者択一の価値観でしか現実をみることが
出来なかった。二者択一は誰かに責任をなすりつけて自己保全を図る考え方です。
今、御社は社長がこれを矛盾だと考えないから存続しています。社長が矛盾だと
思ったら、皆さんはここにいませんよ。会社は無いですから。だから、制度だけ
作って応急処置をしてもだめです。人間はそこでは動きません。御社の規模
でしたら社長の価値観ではなく、会社の価値観と社員一人ひとりの価値観を
リンクさせてください。御社が会社まるごとで、社会に対し何を実現しようとして
いらっしゃるのか、そこを明確にしましょう。それを社員と握ってください。
そうすれば目標管理は勝手に進んでいきますよ」
マグレガーに戻ります。
皆さん、心の中で横にX軸、縦にY軸の2軸を描いてください。
X軸は<性悪説>に基づいた命令・統制・管理の価値観です。
Y軸は<性善説>に基づいた自主自律と人の可能性を信じる価値観です。
皆さんが経営者とすると、あなたはどのような価値観で経営をおこなって
いますか?X軸・Y軸の右⇒左、上⇒下を強⇒弱として、この軸で作られる
平面に円でマッピングしてみてください。一方で社員は全体的にどのような
価値観で会社に参加されていると思いますか? 円でマッピングしてみてください。
円と円が重なっている部分が多ければ多いほど、X寄りY寄りに関わらず会社
全体で「合意」が取れていると言えます。「合意」がなければ組織は動きません。
動かないということは、望んだ成果も出ないということです。これは、「事実」です。
受け止めてください。マグレガーの理論はこのように会社の価値観をマッピング
することで、現状把握にとても役立ちます。社内研修で全社員を巻き込み使って
みてください。事例で取り上げた人事制度運用で悩まれているお会社様にも有効
だと思いますよ。
次回はハーズバーグの動機付け・衛生理論で会社への「満足度」を考える』と題し、
社員の自律的モチーベートを支える経営手法について考えたいと思います。
ご期待ください。